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なぜ40代で「資産の取崩し」を考えるのか?
40代は、キャリアと収入が安定する一方で、人生の支出がピークを迎える「金融的な交差点」です。
子どもの教育費、住宅ローンの返済、そして自身の老後準備という、重量級の課題に同時に向き合う必要が出てきます 。
この現実を乗り切るには、「ひたすら貯める」だけでは不十分です。
そこで重要になるのが、これまで築いた資産を賢く活用する、計画的な「取崩し」という視点です 。
これは資産を減らすネガティブな行為ではなく、人生の重要な局面を乗り越えるための積極的な財務戦略なのです。
40代の3大支出とライフプランの現実
40代の取崩しは、老後資金のためだけではありません。
「教育費」「住宅ローン」「セミリタイア」という、今まさに直面する3大支出への対応が求められます。
教育費:コース別で見るリアルな総額
子どもの教育費は、進路選択によって大きく変動します。
特に私立コースは負担が大きく、計画的な準備が不可欠です。
| 教育コース | 幼稚園から大学までの総額(目安) |
|—|—|
| 全て国公立 | 約1,000万円 |
| 全て私立 | 約2,500万円以上 |
これに加え、中学受験のための塾代(3年間で200万~300万円)など、見えにくいコストも発生します 。
住宅ローン:「繰り上げ返済」と「手元資金の維持」
余裕資金を「繰り上げ返済」に充てるか、「投資に回す」かは大きな悩みどころです。
繰り上げ返済は支払利息を減らせますが、手元の現金が減るという大きなデメリットがあります。
現在の低金利下では、ローン金利以上のリターンを投資で得られる可能性もあり、繰り上げ返済が「投資機会の損失」になることも考えられます。
セミリタイア(FIRE):40代からの現実的な目標
40代で「セミリタイア」を考えるなら、3,000万円から5,000万円の資産が目安とされます 。
この目標は、資産を計画的に取り崩していく「出口戦略」そのものです。
例えば、資産の4%を毎年取り崩す「4%ルール」は、FIREを支える代表的な考え方です 。
取崩し戦略の前に:現在地と目的地を明確にする
効果的な戦略は、盤石な準備の上に成り立ちます。
まずは自身の財務状況という「現在地」と、ライフプランという「目的地」を正確に把握しましょう。
* ステップ1:全資産とキャッシュフローの把握
預貯金、投資資産、負債をすべてリストアップし、家計簿アプリなどで毎月の収支を可視化します。
* ステップ2:ライフイベントの洗い出し
「いつまでに、いくら必要か」を具体的に書き出し、目標を数値化します。
* ステップ3:「生活防衛資金」の確保
不測の事態に備え、生活費の3ヶ月~6ヶ月分を、いつでも引き出せる現金として確保します。
* ステップ4:「リスク許容度」の再評価
資金を使う「出口」が見えてきた今、どの程度のリスクなら耐えられるかを改めて考えます。
* ステップ5:家族との「お金の会議」
お金に関する価値観や目標を家族で共有し、チームで計画を進める基盤を作ります。
40代からの資産「取崩し」実践マニュアル
準備が整ったら、いよいよ実践です。
「どう引き出すか」「どの資産から引き出すか」「税金で損しない知識」の3つの観点から解説します。
取崩しの基本戦略:「定額法」vs「定率法」
資産の引き出し方には、大きく2つの方法があります。
| 方法 | メリット | デメリット |
|—|—|—|
| 定額法 | ・キャッシュフローが安定 | ・資産寿命が短くなりやすい |
| 定率法 | ・資産寿命を延ばしやすい | ・受取額が毎年変動する |
特に、市場が下落した際に資産を守りやすい「定率法」が、長期的な資産維持には有利とされています 。
【実践編】楽天証券で「定率取崩し」を設定する方法
定率取崩しは、証券会社のサービスを使えば自動化できます。
ここでは楽天証券を例に、FIREの「4%ルール」の範囲内である月々0.3%(年率3.6%)を取り崩す設定方法を紹介します。
* PCサイトにログインし、「定期売却」へ
楽天証券のPCサイトにログイン後、メニューから「投資信託」→「定期売却」と進みます 。
* 銘柄を選び、「定率指定」を設定
定期売却したい投資信託を選び、「設定」ボタンを押します。売却方法の選択画面で「定率指定」を選び、売却率を「0.3%」、頻度を「毎月」と設定します 。
一度設定すれば、毎月自動で資産残高の0.3%が売却され、指定の口座に入金されます。
この仕組みを使えば、感情に左右されず、計画的に資産を活用できます。
税金で損しないための出口戦略
資産を取り崩す際、税金の知識は手残りを大きく左右します。
* NISA口座を優先的に活用する
新NISAの利益は非課税で、確定申告も不要です。そのため、扶養や国民健康保険料に影響を与えません。短期~中期の資金ニーズには、まずNISA口座から取り崩すのが最も有利な選択肢と言えるでしょう。
* 課税口座は「源泉徴収あり」が基本
課税口座(特定口座)で利益を出す場合、「源泉徴収あり」を選べば、税金が自動で天引きされるため原則確定申告が不要になり、扶養等への影響を避けられます 。
「取崩し」と「運用」は両輪で進める
資産の取崩しを始めても、運用は終わりません。
「取り崩しながら、残りの資産を賢く育てる」という視点が重要です。
そのための有効な考え方が「バケツ戦略」です 。
| バケツ | 使う時期 | 役割と中身 |
|—|—|—|
| バケツ1 | 1~3年以内 | 短期資金。 生活費など。現金や預金で安全に確保。 |
| バケツ2 | 3~10年後 | 中期資金。 安定的な債券ファンドなどで運用。 |
| バケツ3 | 10年以上先 | 長期資金。 全世界株式などで積極的に運用。 |
この戦略は、当面の生活資金が確保されている安心感から、長期資産が暴落しても冷静でいられる心理的な効果があります。
まとめ:未来の不安を希望に変える第一歩
40代の資産計画は複雑に見えるかもしれません。
しかし、最も重要なのは「今日、小さな一歩を踏み出すこと」です。
まずは、自分の資産と家計の状況を正確に把握することから始めてみてください。
漠然とした不安を具体的な数字に変えることで、未来は自分でコントロールできる希望へと変わっていくはずです。
出典
40代の資産形成における支出の多さについて (https://www.n-estem.co.jp/e-trust/column/unyou/2503-01/)
40代のライフイベントと資産形成の必要性 (https://money-career.com/article/4050)
40代からの資産形成における「売る」計画の重要性 (https://mclinic.jp/column/440/)
定額取り崩しと定率取り崩しのデメリット比較 (https://life.saisoncard.co.jp/post/c2623/)
定率取り崩しによる資産寿命の維持効果 (https://www.bank-daiwa.co.jp/column/articles/2021/2021_284.html)
資産取り崩し期におけるポートフォリオ管理(バケツ戦略) (https://media.rakuten-sec.net/articles/-/33660?page=3)
セミリタイアにおける「4%ルール」の概要 (https://masouken.com/%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E5%88%A5%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%82%A2)
特定口座(源泉徴収あり)のメリットと扶養等への影響 (https://www.rakuten-card.co.jp/minna-money/securities/investment_knowledge/article_2107_00002/)
セミリタイアに必要な資金額の目安 (https://masouken.com/%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E5%88%A5%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%82%A2)
子どもの教育費の具体的な金額(公立・私立別) (https://benesse.jp/kyouiku/202311/20231107-1.html)
楽天証券の定期売却サービスの設定手順 (https://faq.rakuten-sec.co.jp/10002827)
楽天証券の定期売却における「定率指定」の概要 (https://www.rakuten-sec.co.jp/web/rfund/guide/teikibaikyaku.html)
楽天証券の定期売却サービスの概要と利用可能な売却方法 (https://www.rakuten-card.co.jp/minna-money/securities/stock/article_2101_00001/)
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