【厳し目編】自分の人生に必要な資産運用額を計算してみた

資産形成

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「老後のために、一体いくら必要なんだろう?

これまで漠然と考えてきており、ちゃんと計算をしていませんでした。
しかし自分ももう42歳となり、人生の半分を終えました。
今後の人生を安心して過ごすためにここで自分の持っているお金、そして状況を整理したいと思います。

◎現在の資産運用額
約2900万円

◎積立投資額
毎月15万円をeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に投資

この記事では、上記の状態から自分が設定した2つの人生プラン――「65歳までしっかり働くプラン」と「15年後に57歳で早期リタイアするプラン」――で、それぞれいくら資産が必要になるのか、そして今の投資ペースで達成できるのかを、徹底的に計算した結果をシェアします。

シミュレーションの前提となる「自分ルール」

正確な計算のため、まずは前提となるルールを決めました。

使う数字は「超」保守的に

将来の運用利率をどう設定するかは、シミュレーションの肝です。よく「S&P500の平均リターンは年7%」なんて言われますが、楽観的な数字で計画を立てるのは少し怖いですよね。

そこで今回は、**「過去のS&P500の歴史上、最もパフォーマンスが悪かった15年間」**の平均リターンを基準にすることにしました。具体的には、ITバブル崩壊とリーマンショックを含んだ2000年〜2014年のデータです。この期間の年平均成長率(CAGR)は、**4.23%**でした [1]。

今後15年間、歴史的な不況が来ても耐えられるように、この**年率4.23%**という数値をすべての計算で使います。

目指す生活レベルは「月50万円」

リタイア後の理想の生活費として、現在の価値で**「月50万円(年間600万円)」**を設定します。この金額を、インフレを考慮しながら、95歳まで維持できることをゴールとします。

ケース①:65歳まで働く「王道プラン」

まずは、65歳まで働き、その後は年金と資産を取り崩しながら生活する、最も一般的なプランから見ていきましょう。

STEP1:23年後の「月50万円」の価値を計算する

最初に考えなければいけないのがインフレです。物価が上昇すれば、同じ生活をするのにもっと多くのお金が必要になります。

日本銀行が目標とする年率2%のインフレが続くと仮定すると、23年後の65歳時点では、現在の月50万円の生活を維持するために、**月額約78.8万円(年額約946万円)**が必要になります [2, 3, 4]。

いきなりハードルが上がった気がしますが、これが現実です。

STEP2:年金はいくらもらえる?

幸い、この946万円をすべて自分で用意する必要はありません。日本の公的年金という心強い味方がいます。

自分の場合はこれまでの収入から、税金や社会保険料を引いた後の手取りで月額約24.6万円(年間約295万円)が見込めそうです [5, 6]。

STEP3:本当に自分で用意すべき金額は?

目標額から年金額を差し引くと、本当に自分の資産から取り崩す必要がある金額がわかります。

* 毎月の不足額: 78.8万円 – 24.6万円 = 54.2万円

* 年間の不足額: 946万円 – 295万円 = 651万円

つまり、65歳からは、自分の資産を運用しながら毎年651万円を引き出していく生活になります。

STEP4:ゴールとなる「必要資産額」を算出

では、年率4%で運用しながら毎年651万円を取り崩し、95歳まで資産をもたせるためには、65歳時点でいくらの元本が必要なのでしょうか。

計算した結果、ゴールとなる目標額は約1億2000万円となりました。

【結論①】このプランは達成できるのか?

現在の資産2900万円と毎月15万円の積立を、年率4.23%で23年間(65歳まで)運用し続けた場合、資産は約1億4800万円に達する見込みです。

* 23年後の予測資産額:1億4800万円

* 必要な目標額:1億2000万円

つまり、この「65歳まで働く王道プラン」であれば、歴史的な不況レベルの低成長が続いたとしても、目標をクリアできる可能性が非常に高いことがわかりました。これは大きな安心材料です。

ケース②:15年後に57歳で引退する「早期リタイアプラン」

次に、多くの人が夢見る早期リタイア、いわゆるFIRE(Financial Independence, Retire Early)のプランを検証します。15年後の57歳で仕事を辞め、年金が支給される65歳までは資産だけで生活。その後は年金と資産の取り崩しで暮らす、という計画です。

STEP1:15年後の資産額を計算する

まずは、15年後の57歳時点で、自分の資産がいくらになっているかを計算します。

これは以前のシミュレーションで詳細に計算済みで、現在の資産2900万円と毎月15万円の積立を、年率4.23%で15年間運用した場合、資産は約9,417万円になります。

STEP2:「年金なし期間」を乗り切れるか?

ここが最大の難関です。57歳から65歳までの8年間は、年金収入がゼロ。この期間を、資産を取り崩しながら生活しなければなりません。

生活費はインフレを考慮する必要があります。15年後の57歳時点では、現在の月50万円の生活には月額約67.3万円(年間約808万円)が必要です。

では、9,417万円の元本を年率4.23%で運用しつつ、毎年808万円を取り崩した場合、8年後の65歳時点で資産はいくら残るのでしょうか。

計算した結果、65歳時点での残存資産額は約6,100万円となりました。

STEP3:65歳以降の生活は成り立つか?

8年間の「年金なし期間」を乗り越え、65歳時点で手元には約6,100万円の資産が残りました。

しかし、ここで思い出してほしいのが、ケース①で算出した「65歳以降の生活に必要な資産額」です。

* 65歳時点で残っている資産:約6,100万円

* 65歳以降で必要な目標額:約1億2000万円

結果は一目瞭然です。65歳時点で、目標額に対して約5,900万円もの不足が生じてしまいます。

【結論②】早期リタイアの夢と現実

このシミュレーションが示すのは、現在の投資ペースのままでは、57歳での早期リタイアは現実的ではないということです。

もちろん、リタイアは可能です。しかし、その場合、65歳以降の生活レベルを月50万円(現在価値)から大幅に引き下げる必要があります。あるいは、15年後までに、もっと多くの資産を築かなければなりません。

まとめ:自分の人生の「値段」を知ることの重要性

今回、2つの人生プランを具体的に計算してみて、自分にとって非常に大きな発見がありました。

* ケース①(65歳退職): 今のペースを維持すれば、歴史的な不況が来ても達成できる可能性が高い。これは、精神的な安定と将来への自信につながる。

* ケース②(57歳早期退職): 魅力的な夢だが、実現には「年金がない8年間」という大きな壁がある。達成するには、今の生活を見直して投資額を増やすか、リタイア後の生活レベルを下げる覚悟が必要。

結局のところ、資産運用とは、自分の理想の人生に値段をつけ、その目標に向かって計画的に進むためのツールなのだと改めて感じました。

「なんとなく」で投資を続けるのではなく、一度自分の手で具体的なゴールを設定し、そこから逆算してみる。そのプロセスこそが、将来の漠然とした不安を「達成可能な目標」に変えるための、最も確実な一歩なのかもしれません。

この記事が、あなたの資産形成戦略を考える上での、何かのヒントになれば幸いです。

 

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